タキレンメガネ。

タキレンメガネ。

眼鏡が好きだ。

普段はコンタクトレンズをしているから家や休日しかかけることはないが、とにかく眼鏡が好きだ。

なんたってあの、距離感が良い。

世の中といい感じの距離感を保てる気がするところとか、本やパソコンの中の世界を、世の中を見渡すように、でも覗き見ているようなあの感じが良い。

距離感と言えば、こないだまた上司に怒られた。

しまいには別の時に、「俺は今お前の鼻を徹底的に折ろうとしている」とまで言われた。

普段からあまり人に頼れなかったり、配慮が苦手な私をプライドが高いととらえて、そう言ってくださっている。

とはいえ、鼻っ柱を折ろうとしているからか言い方はキツイし勢いも凄い。

何でなん!?

何て事務所に響き渡る大声で言われたら、理由なんて怖くなってしまって、話せない。

ものすごく愛情を感じているから、もっとちゃんとしていたいのだが・・・

ふがいない。

こんな時に冷静に話ができるように、自分と向き合えるように、そんな姿勢が欲しくて、眼鏡をしていたらと思う。

そんな私も新しい眼鏡を買った。

欲しい眼鏡があった。

所謂、丸眼鏡だ。フレーム細めの、あの。

知的な印象からくるセンスの良さを演出できるあの眼鏡が僕は大好きだ。

ついに眼鏡屋さんへ

先日投稿したラブホテル話の友人(女子)についてきてもらって、似合うかどうかをジャッジしてもらう。

意気揚々と店内で、お目当ての丸メガネを探す。あった。これだ。

星野源さんや、滝藤賢一さんもかけていたやつ。

もう気分は星野源さんだ。

寸分の迷いもなく、眼鏡をかける。振り返る。瞬時にジャッジが下る。

「ひどいね。」

もう笑ってしまった。昭和の文豪がそこにいる。

わたしは髪が薄いうえに、彫りも深くなく、一重の薄い顔をしている。

唇は厚い。顔で本が書けるなら、もう芥川賞だ。

だが、年齢は若い私、今一つしっくりこない。友人が言う。


「滝廉太郎。」

それだ!

あの音楽室の後ろで、顔の濃い人に囲まれて肩身が狭そうにしている人!

かわいそうに、あんなに顔が濃い人に囲まれているから、さらに顔は薄く、幸も薄く見えている。音楽家になるなら顔が濃い方がよさそうだ。

みょーにみんなが覚えているのは、あの強烈な薄さと眼鏡と口元のバランスの印象からだろう。

僕は、なれる。というかなってしまう。滝廉太郎さんに。

正直、なりたくはない。滝廉太郎さんの曲は好きだ、かちかちやまとか最高だ。

だけど、なりたいのは星野源さんであって、
滝廉太郎さんではない。

滝藤賢一さんになりたい。

だけど・・・

止めといたほうが良いという友人のアドバイスを理由に、そのコーナーから私は去った。

何となくよさげな眼鏡を買った。顔は薄いので、フレームはしっかりめ。

楕円というかそんな感じだ。

友人は「似合う」と言ってくれた。

見せびらかそうと、その晩別の友人とビデオ通話をした。眼鏡で。

「おう、今日眼鏡しとるやん。珍しい。なんか滝廉太郎みたいだね。」

ん?

んん?

滝、廉太郎?滝廉太郎滝廉太郎滝廉太郎滝廉太郎!!

ものすごい勢いで、滝廉太郎さんが襲ってくる

眼鏡変えたのに、滝廉太郎?なぜ?

友人は続ける。

「お前、似合わないから眼鏡やめとけっていったじゃん。」

僕も言う

「いや、今回こそはと思って・・・」

友人は言う

「お前は、すべての眼鏡を滝廉太郎にしてしまう顔なの。眼鏡ももっと個性があるんだよ。眼鏡に失礼だと思わないか?すべての眼鏡をタキレンメガネにするな!タキレン製造機か!?」

ひどい。理不尽だ。

どうやら、私の顔が問題らしい。

誰もタキレンを製造したいなんて思っていない。

確かに眼鏡が似合わないとは、この友人に昔から言われていた。

だから職場に眼鏡はかけていっていない。

だけどさやっぱ、あるじゃんなりたい理想が。

イケメンに見えたいじゃん。

あきらめるのか、僕は?

ほんとにそうなのか!?僕はタキレンなのか?

立った二人に、言われただけじゃないか!?

検証せずに、あきらめるのか?

星野源になりたいんだ!

明日は、眼鏡をかけて仕事に行ってみたいと思う。

上司が言いたい事って、こういう事なんじゃないかな?

人に良く見えたいとかそういう事じゃなくて、思ったことを言ってみろ。やりたい事を試せ。失敗してもいいじゃないか。不細工でいいじゃないか。

明日は、眼鏡で仕事に行く。

ほんとに僕は、タキレンなのか、上司が言いたいことは何なのか?

自分と、他人と距離を取る。

引いてみる。